今日でdiploma×KYOTO’12は終了したのですが、2日目である昨日のことを書いていなかったので、まずはそのことを書きます。
昨日からメモをとっていたので、1日目よりはちゃんと書けるかもしれません。
昨日書かなかったのは眠かったからです。
2日目の結果はこちらです。

2日目の審査員はテキスタイルデザイナーの安東陽子さん、慶応大学SFC准教授であり複雑系システムやパターン・ランゲージの研究者の伊庭崇さん、新政府内閣総理大臣の坂口恭平さん、現代芸術家の束芋さんの4名でした。
論点は「解像度」つまり対象とするプログラムや諸条件に対してどれだけリサーチを踏んで「実現させようとしているか」、あとは多くの出展作品について僕が思ったことでもあるのですが「既成概念を前提として使う薄っぺらさ」みたいなものが、建築学の外からの視点によってもう丸出しにされたのではないでしょうか。
上位に選ばれた作品はどれも僕から見て必要性や未来が見えるものでした。
あと審査員の方々のことばをあまり書いていませんが、意見と言うより作品に対する質問が多かったためです。

Contents

1位 No.137 「コミュニケーションの過程観察の重要性と観察方法の提案」

天才かと思いました。
Hall, Edward T. (1966) The Hidden Dimension.(日本語訳書は「かくれた次元」)内のProxemics(人と人の間の距離によって構成される空間)の分類

 1.密接距離 intimate distance:0-45cm
 2.固体距離 personal distance:45-120cm
 3.社会距離 social distance:120-360
 4.公衆距離 public distance:360-cm

に則り、公衆距離360cm以上離した居室の配置を作成し、これをコミュニケーションが0である状態としています。
その単位モジュールを変化させた施設を実際に人々に利用してもらう過程でコミュニケーションの生成過程を観察するためのものらしいです。
彼の問題意識として、建築家が描くイメージがどれほど現実的に効果のあるものなのかがよくわからないということがあり、既存の研究を応用できる場を作りたいと言っていました。
彼はパンフレットの出展者からひとことという欄に「ずっと健康でいたい」と書いています。天才かと思いました。
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安東さんや束芋さんは主に模型のビジュアルについて質問をしていましたが、それは的はずれだと思いました。
彼は建築学の現状を批判的に解釈して提案をしているため、主張の端々にさらりと批判を込めるのですが、坂口さんは「絶対面白いからそんなこと言わないほうがいい」と言っていました。
伊庭さんはメモしていませんでした。

僕の意見
既存の研究を応用できる場を作るという彼のビジョンはとても共感できるもので、天才かと思いました。
あと模型はコミュニケーションが0の状態なんだけど、かっこいいよ、それ!
物理的にコミュニケーションを断絶する他の要素(障害物)はどうすんの?
でもまずその発想があれば、壁面を追加した場合にどうなるのだろうとか、音響や環境を考えるとどうなるのだろうかとか、未来に期待が膨らみます。
ぜひお近づきになりたいので、本人が見ていたら、よかったら僕のtwitter(@Drunkar)までDMかなにかくれると喜びます。

彼の論理的思考能力はもちろん、卒計展で評価されることが目的なのではなく、はるか先のビジョンを考えながら進んでいるように感じられるということに、審査員のみなさんも票を投じたのだと思われます。

2位 No.123 「驚くほどわかりやすい取扱説明書がある家」

自閉症の研究を研究室でおこなっており、その典型的な症状を持つ人物を対象としています。ひとつの機能にひとつの部屋を作り、部屋を後戻りせずに進んでいくことで1日を過ごします。絵を描くことが趣味の彼の絵をギャラリー空間に置き、たちよった人は自由に持っていくことができる。それが居住者と社会との接点となるらしいです。
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伊庭さん:こういう建築はクライアントそれぞれに対してまったく異なる家を作ることになると思うので、もっと具体的に対象を設定するか、性質に対する普遍的なパターンを見つけ出して設計として提示するともっとおもしろい。
坂口さん:もう少し「解像度」がほしい。もっと彼が「自立」するということを具体的に。俺は建築なんか必要ないと思ってるが、建築を建てる理由になるかもしれない。
束芋さん:メモ無し
安東さん:メモ無し

僕の意見
絵がハンパなくうまい。イラストレーターかと思いました。しかもアナログ(コピック)。
ちゃんと定量的にスケールとか考えてる(本来あたりまえだけど)。
食料とか買い出しとかどうすんの?
身体を補助する建築というのは本質的だと思った。

3位 No.027 「泉地順礼-これからを生きる日本人の温浴瞑想空間-」

中が温泉とかサウナとかになっている長い五角形チューブの中を歩いて山を登っていき、最後の浴場までたどり着くと、今度は折り返して入り口まで戻る。
途中で出れない。まっすぐな部分と階段の部分で構成されていて、高さは18m登ることになる。全長200mぐらい?100mぐらい?(全然覚えてない)
彼の論理によると西洋の広場は思考を共有する場であって、日本にもそういうものを作る価値が有ると考えたらしい。
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伊庭さん:進んでいくってのが面白い。僕だったら行きたい。
坂口さん:公共の場として風呂を設定するということに対してリサーチが少ない。ホントに西洋の広場が思想の共有の場なの?地面にコンクリート流したりしたら俺なら泣く。
束芋さん:メモ無し
安東さん:メモ無し

僕の意見
その発想はなかった。
せっかくだからもっと高さを生かしてどこかで眺望が開けるとかしたほうがいい気がする。
待合室とかの設計次第でかなり行きたいと思う。
そんなに密度が高くはならないけど、お湯の「流れ」を身体で感じることで人の気配を感知できると思うのでおもしろいかも。(伊庭さんの論文「すれ違いの可知化」みたいな。これを読んだ時伊庭さんは天才かと思いました。)
あと坂口さんが言ってた「神社は地面にコンクリート打ったりしない」はウソだよね。建築の人は知ってると思いますが伊勢神宮ぐらいでしょう。

だいたいここまででわかりますが、メモ無しが多いです。
なぜかというと、審査員の方々の意見の多くが質問調だったため、それに対して出展者が「こういうことです」と答えて終わり、という問答が多かったからだと思われます。
それについては、審査員の方々が建築学における多くの前提を出展者と共有していないことが一番の理由としてあげられると思いますが、「自分はこう思うけどそういうふうにやってるの?」→「はい/いいえ」→「それはこうではないか」という問答が昨日の建築家である審査員の方々、そして2日目の伊庭さん、坂口さんに主に見られました。議論を発展させ、「自分で考えることを促す」言論であるなーと感心しました。

あと2日目の論点である「解像度」について
僕が展示を見ているときに最も目についた言葉が「均質」という文字。しかもその論理がいきなり「均質なビルがたくさん建っては壊されているこの現状はよくない」とか「均質空間による支配は私たちの生活の豊かさを奪います」とか。
きっとどこぞのお偉い建築家の名著を2,3冊読んだのだと思われます。
僕は「ホントにそう思ってるの?」と聞きたいです。
たしかに地価に対する収支を考えると、既存のモジュールを組み合わせてある程度収益の見込める前例のあるモデルを採用することで、似たような建物がたくさん生み出されると思います。でもあなたはそうじゃないと言ってるんでしょ?そんでまわりのみんなも同じようなこと言ってる。それのどこが「均質さに支配された社会」なの?「均質化に支配されたという言論に支配されて」るじゃないですかと言いたい。
つまり言いたいことは、今支配的な言論とか過去の名著で語られたことは、現実のある部分を観察した時に多く観察される側面でしか無くて、例外もいっぱいあるってことです。
解像度が粗かったら、だいたい同じものに見えてしまうけど、それでは本質はつかめない。
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そして往々にして解像度を粗くすることに意味はありません。日本のアダルトビデオにモザイクが入っているのにも意味はありません。
京都大学では卒業設計か卒業論文どちらかを完成させることで卒業資格が得られるので、論文の経験をしている人から見て「解像度の粗い」設計というのはとても気になるのです。
きっと解像度をもっと細かくしていけば活路が見つかると思うのになー、と思うことが多々あります。

2日目で上位に入ったものは、既成概念を前提として使っていないな、と思いました。

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