京都のみやこめっせで本日から3日間開催する卒業制作展diploma×KYOTO’12の1日目が終了しました。3日間で毎日1位を決めるという趣旨のもと、1日目は建築家の青木淳さん、北山恒さん、手塚貴晴さんが招かれました。今日の結果はもうこちらに出ているようです。

僕は卒業設計はしていないのですが、卒業論文を展示しています。論文の人は順位とかに関係のない気楽な立ち位置なので、入賞作品と講評について思うところを思考の記録も兼ねて書いておこうと思います。
卒業設計していない人間の特権は無責任に意見が言えることだと思うので、無責任に言いますが、「いやこれはこうだよ」みたいなのがあればコメントください。偉そうだけど偉くないです。踏みつぶしてください。
まだ全作品の3分の1も見ていないので、全体的な感想は明日以降に書く気があれば書きます。

主な論点は、「造形をするという勇気」とか「建築家の職能はこれからの社会でどのような役割を持つか」ということだったと思います。前者については、僕も以前エントリ(「建築」と「そうでないもの」)で書いたのですが、「造形を恐れるな」という手塚さんの熱いメッセージを聞くことができました。

Contents

1位 No.129 「わたしとあなたのあいだに」

タイトルから中島みゆきへのオマージュかと想像していたのですが、どうやらそうではないようです。
直方体の箱の内部にプラトン立体のアッサンブラージュで、煙突みたいな塔がついています。20人の人が共同で生活する家らしいです。外観は「普通のマンションみたいな」感じらしいです。
コンセプトは「共同生活する人のパブリックとプライベートの中間領域の無限のグレーのグラデーションをつくる」だそうです。きっと黒川紀章のアレです。
煙突みたいなのは高いところが好きな「67歳の年金生活のおじいちゃん」のお気に入りだそうです。
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1位に推された理由は
青木さん:建築にはさまざまな能力が必要となるが、この作品には彼女が大学生活で得たであろう造形に対する考えがよく出ていておもしろい(うろ覚え)
北山さん:最初「これは社会との接点がないため建築ではない」と言っていたものの、「もしかすると僕達の世代とは「家族」に対する考え方が根本から違うのかもしれず、そうであればおもしろい」
手塚さん:本人が楽しそうなのが良い。クライアントも楽しい家を作ってくれそうな人に頼む。造形してるから。
といったことがあげられると思います。

僕の意見
パネルがきれい。模型がドールハウスみたいでかわいい。20人で暮らすの狭くない?トイレは?室内で植物?
20人の個人を設計者の都合よく想定して集合住宅をつくるというのはいいと思うのですが、その20人のスペックが描いてないため、どのような生活が営まれるのかわからない。例えば、まったく生活スタイルとか活動時間の異なる人がいっしょに生活するのかどうかとか、同じような人が生活するのかどうかとかを選ぶことで、もっと今後の社会での立ち位置を明確にできたのではないでしょうか。それをひたすらトレースするよって、風呂を20人が使うとしたらどれぐらい時間かかるし、そしたらこういう待合場所が必要だよねみたいなリアリティや社会性も獲得できたのではないでしょうか。

結果として、彼女のパネル・模型の色彩的・玩具的魅力と、北山さんが言うように既存の生活感でないものが(無意識に)表出しているということが1位に選ばれた要因であるように思います。

2位 No.022 「消えるビル」

2014年建て替え予定の阪神百貨店梅田本店の最後の2年間をお祭りにする。そのお祭りによってビルが都市に記憶されるらしいです。
既存ビルにスラブをキャンティレバーで外付けしてそれをスロープでつなぎ、今までと違う角度からビルを見よう!ということのようです。
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青木さん:きっと君は意識してないだろうけど面白い考えに触れかけてる(北山さんだったかも)
北山さん:これってビルの建て替えに対して肯定的なの?批評的なの?(返答→ほぼ批評的)(たぶん「否定的」の意)
手塚さん:覚えてない←

僕の意見
プレゼンの最初のステイトメントがよかった(建て替わるビルのダイナミズムには興奮を隠せないみたいなやつ)のに、否定的なの?
「なぜ記憶となるのか」の説明がなかった。百貨店の記憶って、2年間違う角度から眺めたから生まれるの?子供の頃にばーちゃんと食べたハンバーグがとか、あのウルトラマンショーがとかが記憶なんじゃないの?

これは「ビルの解体」のシナリオの提示として「祭り」という楽しげなものをやる、ということが評価されていたように思います。きっと彼女には百貨店と祭りを結びつける楽しい記憶があったのでしょうが、それについて自己言及せず、ただなんとなくそれを提示していただけだったのが惜しまれます。また、祭りの内容についてもあまり具体的な言及がなかったのが残念でした。

3位 No.008 「変化する風景」

香川県のテーマパーク跡地に新たに観光客向けのテーマパークをつくる。宿泊施設込み。釣りとか特産品の収穫とか。パンフレットには「地域密着型」って書いてある。でも主な客は観光客らしい。自然派テーマパークらしい。
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青木さん:おもしろくなりそう。でも意識してない。配置がユニークでいい。
北山さん:忘れました
手塚さん:おもしろいもの作ってるけど使えてない。わかってない。「もっと勉強してください」「グラフが嫌い」

僕の意見
90年代の地方テーマパークブームのやつと何が違うの?地方のテーマパークの客はほぼ地元民だと思うんだけど・・・。
来たくなる要素がなんなのかわからない。例えば白川郷の合掌造りの中で泊まれるとかなら魅力的だけど、田舎の中にわざわざ田舎の風景を作って客を呼ぶの(確か青木さんも言ってた)?
部分部分が散漫な気がした。シークエンスとして提示されていないので。

テーマパークということで青木さんにしてみれば関心のある領域なのでしょう、結構食いついていた気がします。僕は原っぱと遊園地は読んでないのですが、たぶん地方の観光収益のあり方として、実際に農業が営まれている場所を観光地化することができるのではないかというアイデアに昇華できれば面白いのではないかと思います。彼女の造形は割りとシンプルで身体性を誘発するので、手塚さんは食いついていました。例えば手塚さんが「海坊主」と言っていたやつ
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は、「ふわっとした」身体イメージを誘発するのですが、彼女はそれをフォリーとして使うといっていて、手塚さんは「わかってない。もっと水の上に浮かせるとかあるじゃない」と言っていました。僕は野又穫のやつを思い出しました。

あとグラフについては、いろいろ言いたいことはありますが、Processingの生みの親であるBen Fryがビジュアライジング・データの中で情報可視化の基本として言っていた「複雑なデータは美しく見えるし、人間は調べた成果を誇示したい欲求を持つものだが、それをぐっと堪えて、必要なものだけを見せなければならない」みたいな言葉に託します。

あとは、最終講評でも言及されていたNo.068 「ARK」、No.092 「確固として在る風景」、No.133 「Sanctum」についてちょろっと書きます。あ、あとNo.069 「このまちの異物」は廃墟界の重鎮福岡の志免鉱業所っぽいなと思いました。

No.068 「ARK」

種の保存をする1000年建築。唯一の男性。手塚さん「こういう誇大妄想的なのは必要だ」青木さん「別に誇大妄想が必要とは思わないけど」。
僕の意見
ビデオかっけー。模型かっけー。模型光ったら最高。
廃墟の中にマッシブな機械みたいなのが建ってるビジュアルが最初から最後まであったのだろうか。ナウシカの墓所みたいな感じをイメージしたのだろうか。
「種子バンク」という既存の機能をこの場所にうまく配置したが、もっと種子バンク自体のあり方みたいな提案があると良かった気がする。つまり、ビジョンがない気がした。例えば「種子バンクがあるということが、いつか大きな財産になる」という話。でもツッコミづらい。たぶん種子バンクの是非を問うところから学会利用とかのリアリティを獲得するまでの議論が望ましいけど、それをやるには時間がなさすぎるので。

No.092 「確固として在る風景」

集落に「せんせいのいえ」というものを散在させることで、地域全体を使った教育の提案。手塚さん「「造形をしない建築家」のあり方だろう」。
僕の意見
小学校の機能を点在させるとかはいままであったけど、「小学校」という名前とか枠を使わずに、「教育」という枠で考えているのがいいと思いました。
僕も前期スタジオ課題では「造形しない」提案だったので、苦労はわりと想像がつきます。
空間的なリアリティをもたせる以外の方法として、今の小学校のカリキュラムと、それが目指していることを調べると、この方法によって目指すのはこの方向ですみたいなのが説得力を持たせてできるのかな、と思った。自分が今それをやるとしたらそういうアプローチを取ると思う。やってるかもしれんが。

No.133 「Sanctum」

地域おこしのぶどうとハーブの栽培拠点。青木さん(だったか)「水道橋のビジュアル先行じゃないの。この場所にこのビジュアルが合うのは理解できるが、この構成となるのは理解出来ない」北山さん(だっけ)「ジョゼッペ・テラーニのダンテウムみたい」手塚さん「水道橋どこからどこまで?元々修道院にするつもりならいい気がしてくる」。
僕の意見
高さ方向の変化と空間のメリハリや視線の誘導はすごくいい。絵うまい。
搬入・搬出口は?ぶどうって水道橋必要ないと思われ。ぶどう機械で収穫しないと収益でないんだけどそれだとほとんど人いらないんだけどどうするの?
手塚さんが「ラ・トゥーレット」に見えなくもないしって言った時「えっ」と思ったけどたぶん来場者が知ってる修道院の名前を出しただけだろうなと後になって思った。

明日の講評会ゲストは安東陽子さん、井庭崇さん、坂口恭平さん、束芋さんらしいです。楽しみです。

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